連載コラム

本松洋一 氏

「まだまだ素人です」

私は工学部出身の理系男子。
自動車部品製造業や建設設備会社にて福祉とは程遠い所で仕事して来ました。
理系選択の理由も「人と関わるより機械の方が気が楽」という理由です。
そんな折、「異業種として福祉に携わる」という計画が持ち上がり、「訪問介護事業」の新規立ち上げの担当者になったことが私の福祉の始まりでした。

平成6年の春。まだ在宅介護は措置制度の中でした。
私のような全くの素人が、福祉経験のない民間企業で手探りでの福祉の仕事は無謀でした。
それでもただただ企業人の使命感だけで頑張りましたが、今思えば何でもないサービスや苦情に右往左往の日々でした。

それでも4年後都内B区の業務委託を受託できるまでになり、契約者は100人を超え、それに伴いケア内容や要望も複雑化し、並行してクレームも増えました。

でも委託という形で生まれた行政との密接な連携や指導は私たちにとって良くも悪くもこの上ない勉強となり、その後の介護保険導入から始まる民間競争の中で、信頼性、誠実性、確実性で高評価を頂けるまで成長できました。

立ち上げから16年間にわたり訪問介護事業にどっぷりと浸かり、数々の困難ケースや山のようなクレームにそれこそ真摯に対応し、時には失敗してきたことは私の自信に繋がりました。
企業に対する使命感はいつのまにか人に対する使命感に「やらされてる感」は「やらなければ感」に変ってきました。
初年度10数万程度の売り上げは、いつしか億単位。

過労で倒れたり、鬱にもなりましましたが、でもこの仕事が心底好きになり、人と接する仕事は確かに大変ですが、なんとやりがいのある仕事なのか。そして体温を感じる仕事なのかを痛感しました。

経験を経て、私の根底にあるのは「素人意識」です。

当初、他事業所の専門職の方々との会話で感じた圧倒的な劣等感は今でも覚えています。だからこそ自分の経験値や知識はまだまだ低く、もっと勉強せねばという気持ちが湧く。それは結果的に周りを引き上げ、チームの底上げに繋がっていくと思います。

「素人意識」を大切にすることはスタッフの教育・評価にも反映されました。

80点の優秀な職員のスキルアップも大切ですが、私のような赤点しか取れなかった職員を50点60点と上げていく方が事業所として大切と考えます。

まだまだ素人と思う事が結果向上心になり、サービスの質向上になると思いませんか。