連載コラム

増田由加里 氏

「ありがとうございました」の気持ち

「ありがとうございました。」
と伝えた時に目を開け軽く微笑み「ありがとう」のサインを貰ったONEシーン。
認知症状のある80代女性の利用者(ハンドアロマトリートメント事例)
認知症が進行し少し幻覚症状がある様子。
落ち着かずフラフラ歩き回っていることが多い。
会話も一方通行ぎみで反応は拒絶傾向にあるコミュニケーション能力の利用者様です。
最初は、知らない人に何されるのかと警戒していた様子。
そんな彼女の手を突然取り、アロマオイルを塗りトリートメントをするのは難しい。
そこで一緒に椅子に座り、視線を合わせ、呼吸を合わせ認識してもらう事から始めました。
表情が和らいだ時にアロマトリートメントの説明をして優しく手を握り寄り添います。
状況を観察しながらゆっくり手を擦ります。
暫くすると、気を許してくれたようで、緊張して力が入っていた手から段々と力が抜け、私の前へと手を差し出すのです。
そのタイミングを待ってましたと、鎮静効果やリラクッス効果の高いラベンダーのオイルを使い、優しく包み込むようにトリートメントを開始。
強張っていた表情が、穏やかになり目をつぶり、ウトウトと気持ち良さそうに舟を漕ぎ始めます。
冷たく青白かった手が温まりほんのりピンク色に!トリートメント終了。
「ありがとうございました。」と一声かけると目を開け軽く微笑んでくれたお顔がすごく心に残っています。
言葉ではなく、笑顔のありがとうであり、気持ち良かった事への満足と思います。
そんな利用者様に私は三つの意味で「ありがとうございました」とお伝えします。
①トリートメントをさせて頂いて
②貴重な時間を共有させて頂いて
③いただいた笑顔への感謝を込めて
「ありがとうございました。」
その後スタッフの方からの報告で帰宅後の利用者様情報を聞きました。
「その日はいつもよりも落ち着いており、夜も徘徊することなく、ぐっすりと寝ていた」とご家族から連絡があったとの事。
その夜はやっぱり ありがとうございましたと心に思い、利用者様にいただいた笑顔には勝てないが、私も笑顔で過ごしました。
私達セラピストは、利用者様の身体に触れ、体温やお肌の状態を観てトリートメントするだけではなく、一番大切なのは利用者様の色々な合図を読み取り、歩みより、寄り添う事で、お互いの存在を感じ合う事。そして関係性をつくり、ほっと安らげる至福の時間を提供する事です。