連載コラム

小泉 晴子 氏

「駕籠に乗る人担ぐ人 その2」

認知症は年をとれば誰でもなる可能性がある、と言われています。
でも、多くの人は心の内で「まさか、自分は大丈夫」と思っています。
なので告知された時はパニックになったり、受け容れがたくて否認したりしてしまいます。
上手に“介護という駕籠”に乗ることは難しいのですが、なかには見事な方も居られます。
Aさんは定年後の第2の職場で自分の異変に気付きました。
受診でアルツハイマー病と告知されると66才で会社を辞め、それまで休日の楽しみだったゴルフの練習と散歩を日課と自分で決めて毎日を過ごしています。
時々、会社の元同僚や元部下と食事を楽しみ、囲碁クラブにも通っています。
遠出をして迷ってからは、同窓会などは奥様に同行して貰い、外出を楽しんでいます。
70才の今は「会社人生で全力投球したので悔いはない」と仰います。
Bさんは「デイサービスに行かないと妻に嫌われる」と話されますが、外出時に奥様を上手にエスコートするダンディーぶりは、受診後10年たって80才を迎えても変わりません。
お二人に共通することは、ごく軽度のうちに診断を受け、医師から説明を受け、ご自分の認知症をしっかり受容していることです。
認知症について理解し、出来ないことは周りに頼りながらも出来ることは積極的に行動していることです。
Bさんは「僕は“アルツー”だけれど、そそっかしい君は“アルワン”だね」と奥様に冗談を言われます。
そんな冗談が出るまで、ご夫婦共にどれだけ涙を流し、眠れない夜を過ごしたことでしょう。
認知症に究極の予防法や治療法は今のところありません。
軽度でも何れは重度に進行します。
怖くても早期受診と結果の受容に自分のこととして向き合っていきたいです。
家族や介護職、医療職など、介護という駕籠を担ぐ人に上手に担いで貰うために。