連載コラム

石原綾子 氏

人の豊かさを創出する食

私たちが生きていく為には「食す」ことが必須である。
当たり前のことだが、人は食べなければ生きていけない。
食べることで、栄養素を取り入れ身体を形成したり、エネルギーを作っている。
現代では、飽食の時代と言われ、食べたいものを食べたいだけ、いつでも食べることができる。
食を身近に感じている人は多く存在する一方で、食への興味関心が無い人々も多い。食への関わり方として次の4つの分類を考えてみた。

① お腹が膨らめばOK
(だされたものはなんでも食べるが、食べてから数十分も過ぎると何を食べたか思い出せない)
② 美味しいものなら何でもOK(料理の見た目、油を多く使う料理に満足する)
③ カロリーは敵!(食べ物=カロリーと考える。太らない食べ物がもっとも良い食べ物と考えている)
④ 食は身体を作っている(食に対し非常に興味があり、食のストーリーまで知ろうとする)

こうした分類の中で、①②のような、食べ物=餌として捉えるグループでは、健康を害する等の身体への影響だけでなく、感情の起伏が激しくなる傾向がある。
また、心への影響をしていることが、アメリカの研究で報告されている。
日本では、カロリーを重視して食事バランスをとらえることが多い。
5大栄養素や食品の品質、原産地、旬などの「質」を中心に選択することが重要であり、1日3食各食事の日本食である一汁三菜のスタイルが豊かな生活を形成すると考えられる。

食べることは、未来の身体や心を形成していると言っても過言ではない。
身体や心(すなわち脳)への栄養素を補給するという意識を持ち、質とバランスの良い食生活を選び、食品添加物が多く入る加工食品等を選ばない等、食を正しく選択することが豊かな生活を送る為の重要なポイントである。

*****しかし、私は単に「食」は身体を作るためだけなのかと思っている。

食は栄養補給的な役割以外に愉しむものでもある。
誰とどこで何を食べたかによってリラックス効果や幸福感を得ることができる。
また、匂い・味・音などの食を通した五感から過去の記憶を引き出すこともある。
特に、『おふくろの味』は誰しもが持っている。
消えかけていた記憶がよみがえった時、当時の想いもよみがえる。現在、受け継がれることが少なくなってきた「おふくろの味」だからこそ、非常に貴重な食体験であると考えられる。
不思議なもので、同じレシピを再現しても100%同じ味にはならない。
これは、作った人の想いが違うからである。
料理は、想いが込められているかいないかによって味が変化する。
「おふくろの味」には、食材や調味料の他に、想いが入っているのである。
現代社会では、見知らぬ人や機械が作る食を食べる人々が増え、家庭で食べることの大切さを軽視されやすい。
想いを持って作ることが、豊かな食に繋がり心に繋がるのである。
こうした過去の「思い出飯」は、現代の飽食やストレス社会で生きる私たちにとって非常に貴重なものである。

私たちの身近な食は、過去の記憶をひきだし、心と未来の身体を形成する等、非常に重要なライフスタイルの一部である。身近だからこそ、蔑ろにされがちだが、「質」への意識を持つことが豊かな生活への寄与となる。

+++++さて、介護現場での食では、私が想う食と同様のものなのだろうか・・次回検証してみたい。