連載コラム

石原綾子 氏

介護現場の食について

介護現場では、現在、噛む力(咀嚼機能)、飲み込む力(嚥下機能)を助け、健康状態なども含めたひとりにひとりに併せた食を用意している。
食事は楽しみのひとつとして、よりおいしく、より安全に召し上がっていただけるように、その方の状態に合わせて食事の形態というものが決められている。

食事形態の種類としては、次のような分類になっている。
①常食(通常食):一般的な食事のことであり、それでも硬くて食べにくい物(イカや肉など)はある程度食べやすい大きさにカットされている。
②きざみ食:細かく刻んだりすりつぶしたりして、ペースト状にしたものである。
③軟菜食(ソフト食):肉や魚などをすり身状にした食事であり、野菜も湯通しするなどして軟らかくしてある。
④ミキサー食(嚥下食):主食(ご飯など)や副食(おかずや汁物など)をミキサーにかけ、出汁などで味を整えて提供するペースト状の食事であり、トロミをつけて提供する場合もある。
⑤療養食:持病のある方専用の食事で、糖尿病食、減塩食、腎臓病食、脂質コントロール食などがある。
⑥流動食(濃厚流動食):ミキサー食と混同されがちですが、こちらは食事を摂ることのできない方の食事(経管栄養)。鼻からチューブを入れて直接に胃に流し入れるもの(鼻腔栄養)と、胃の部分に手術で穴を開け直接流し入れるもの(胃ろう)がある。

これらの食事形態は、その方の希望やご家族からの希望も配慮した上で、なるべくその方が食事をおいしく、安全に召し上がっていただけるように考えないといけないと考えられている。
つまり、施設は病院ではなく、生活の場そのものだからだ
生活の中の食として、「おいしさ」はとても重要なものと考える。
「おいしさ」は様々な味覚、風味、食味、文化・環境などの「味の構成要素」から成り立ち、五感をすべて使って、脳を刺激して感じている。
その中でも、視覚に依存する割合が大きく、見た目は味の感じ方にも大きく影響する。
五感による知覚の割合は 視覚が83%、聴覚が11%、臭覚3.5%、触覚1.5%、味覚は1.0%とも言われており、視覚による影響が大きいことがよくわかる。
実際、目を閉じて食べてみると、その食べ物が何か正確に言い当てることは、とても難しいことである。
なぜなら、私達は視覚から得た情報で食べ物を認識すると、過去の記憶から情報を探し体は受け入れる準備をはじめる。
「おいしそう」と思うのは、過去に美味しかったとして残っている記憶と、目の前の料理を比較し予測している。
つまり、食事をする前に、「楽しみ」「わくわくする」「おいしそう」と感じることがとても重要であると考える。
彩り、盛り付け方法によって、食べたいという欲求、食べた時のうれしさ、食べた後の満足感を得ることができる。
食はエネルギーを摂取したり体を整えたりするが、いくら栄養バランスの整った食事であっても、残さずおいしく召し上がっていただかなくては意味がない。
食の現場では、食の楽しさや感動を与えることが非常に重要である。

最近では介護食の種類も豊富で、食品会社などからも様々な介護食が発売されている。
それだけ介護の食事に対する重要性が、世間に認知されてきたと考えられる。
農林水産省では、介護食品の市場拡大を通じて、食品産業、ひいては農林水産業の活性化を図るとともに、国民の健康寿命の延伸に資するべく、これまで介護食品と呼ばれてきた食品の範囲を整理し、「スマイルケア食」として新しい枠組みを整備した。
地域の食材を活用したり、郷土料理で介護食品を開発したりする取組も期待されている。
介護現場の食でも、地域の食材を活用すること、郷土料理をはじめとする利用者の思い出深い献立を、作り手が想いを持って作ることで、感動や楽しさを与える豊かな食に繋がり、必然的に心に繋がっていくと考えられる。
感動・楽しさを併せ持つ過去の記憶に残る「思い出飯」は、介護の現場においても非常に貴重なものである。