連載コラム

小川晃子 氏

ICTを活用したからといって確実な異変把握はできません

ICTを活用したからといって確実な異変把握はできません

独居高齢者の見守りのために、ICT(情報通信技術)を活用した様々なサービスが開発されていますが、それを活用する際には、異変把握が確実にできるのかという質の検証が必要です。
今回は、現場で起きている事例をもって、そのことを指摘しておきます。

電話回線を使った緊急通報システムは、利用者には「お守り」のようにありがたがられます。
しかしその反面、長年使っている利用者は「いざという時に押せないかもしれない」と不安を持っています。
緊急時に通報できない主要な要因はペンダント型の子機を携帯する人が少ないからです。
トイレや風呂場で倒れた場合、子機がなければ通報できません。
なぜ携帯しないかを問うと、その背景には「誤報をしたら申し訳ない」という遠慮感があることがわかります。
ペンダント型は歩くと胸にあたり誤発信をするからです。
これを数回経験すると、携帯を避けるようになります。

異変が通じない要因は、利用者側だけにあるわけではありません。
緊急通報を夜間集中方式で行っている場合、東京のセンターで対応するオペレーターに高齢者が「あたった」と言っても伝わりません。
脳卒中多発地帯の東北では、「脳ににわかにあたる」という意味で異変を伝えるキーワードなのですが、残念ながら他地域の方には伝わりません。

各種の生活センサーの確実性にも同様の問題があります。
トイレのドアセンサーを安否確認に設置しているA市では、異変通知が山積みになっていました。
トイレドアをきちんとしめる習慣のない高齢者は結構多いのです。
何度言っても改まらなければ狼少年状態になり、安否確認の用をなさなくなります。

また、山間僻地B町の住居では、玄関や勝手口の土間にテーブルとイスの空間があります。
安否確認のために人熱を察知する赤外線センサーを設置に来た県外業者さんは、食事や団らんの場としてにぎわう場がよいと判断しここにセンサーを設置していました。
しかし、そこは寒くなれば薪ストーブをたくところ、熱量をみるには不適当です。

高齢者の異変把握の確実性を高めるためには、個々人の生活スタイルとの適合性を検証するとともに、発信された異変情報を受け止める運営体制をつくらなければならないのです。