連載コラム

伊藤史人 氏

それでも「パソコンは苦手」といいますか?

第1回では、重度障害者の「健康」を高めるにはICT(以下、テクノロジー)の活用が不可欠であることをお話しました。
しかし、現実はそう甘くはなく、活用できるはずの人がただベッドで寝かされている例が後を絶ちません。
では、なぜ福祉・教育分野においてテクノロジーの活用がイマイチ進まないのでしょうか?

重度障害者であっても、ほんの少しの動きがあれば自由にパソコンを操作する方法があります。
すでに、世の中には道具も方法もそろっているのです。
例えば,微小な動きを検出するセンサー式スイッチや目の動きを捉える視線入力装置。
これらを使えば,専用のソフトウェアと連携して普通の人と変わらないパソコン操作が可能になるのです。

それにも関わらず,福祉・教育関係者の少なくない人が「パソコンは苦手なんです~」などと言って、可能性のある人たちの可能性を殺しています。

滋賀県に住む田中あかりさんは20歳のSMA1型の女性(写真)。

田中 あかりさん

生まれた20年前は今ほど支援機器がそろっていませんでした。
それでも、ご両親をはじめまわりの人があかりさんの可能性を信じて、
支援機器を適用してきました。
今では レッツチャット・iPad・miyasuku EyeConSWや
マイトビーを使いこなして、コミュニケーションに不自由しない環境を
手に入れています。
最近では、AIスピーカーともお友達になり、日常会話を意思伝達装置の
音声出力を介して会話するようになりました。

あかりさんの能力だけが特別なのではありません。
実に多くの子どもが同じくらいの能力を持っていたにも関わらず、長い間寝かされ続けて、ついには何もできない子にされているのです。
大人の障害者でも同様です。
動けないから何もできないわけではなく、テクノロジーの適切な適用があればコミュニケーションのみならず、社会で活動することさえ可能になるのです。

現在、WebサイトやSNSを通じて、支援機器の活用ノウハウ、さらにはたくさんの実例が報告されています。
それでも、支援者(教諭・コメディカル・ヘルパーや家族)の「パソコンが苦手」という思い込みが子どもを殺している現状がなくなりません。

実のところ、重度障害者にテクノロジーを適用するにあたり、細かいパソコンの知識は不要です。
あかりさんのお母さんも含めて、よく活用できている当事者の支援者の多くは「パソコンが苦手」なのです。
必要なのは、愛情と行動力!重度障害者のテクノロジー利用はだれの仕事でもないので、それが一番重要なのです。