連載コラム

渡辺道代 氏

渡辺道代氏

Profile

NPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン副理事長。

大学卒業後、都内病院で約10年医療ソーシャルワーカーとして勤める。
1998年上智社会福祉専門学校専任講師、2007年より岩手県立大学社会福祉学部講師・准教授を務めた。

現在は父母の介護のため退職し、専門学校・大学の非常勤講師等で社会福祉専門職の育成に携わっている。

高齢者や障害者等の介護における介護者支援についての研究や活動を行っている。
介護者サポートネットワークセンター・アラジン(理事長牧野史子)は介護者支援を専門に行うの先駆的NPOである。

メッセージ

家族支援の立場からは、介護職の人たちに対して、ケアしてくれる事に感謝している事が多いと思います。
それゆえ、家族は多少の不満があっても、それを言わない事が一般的です。

【 Aさん 家族の発言 】

「ケアマネジャーや主治医と普段からよくコミュニケーションをとる事も大切です。たしかに相性もあるけど、要介護者の事も、介護者自身の事もわかってもらう必要があります。介護者が楽になる発信してもよいと思う。あせらず、でも主張して、(嫌われないように)言い方をかえながら進める事が肝心だと思います。これ(コミュニケーション)が面倒くさくなってしまうといい方向には行かなかった。」

家族の調査でときどき聞かれる発言として、「ヘルパーさんや介護職はそれほどプロじゃない」という声が聞かれる事があります。
どんな時に聞かれるかというと、介護への不満というより、コミュニケーションへの不満である事が多いように思うのです。「わかってもらえない」という感じです。家族が「わかってもらえない」と感じるときは、やはりいいコミュニケーションがとれていないときだと思います。

家族が努力していないわけではなく、「介護する他の家族へどのような事を伝えたいですか」と問うと「自分からコミュニケーションを取る」とか「感謝している事を伝える」、「いい関係をつくるようにする」などの発言も多く、ヘルパーさんやケアマネに対して、関係性に配慮して、積極的にコミュニケーションをとろうとしていいます。

介護するサイド、ヘルパーさんやケアマネなどからはかえって家族の気持ちや思いは見えにくいのかもしれません。
介護を受ける高齢者や障害者が支援の中心のため、その背後の家族の姿や思いまで理解しにくいのでしょう。
家族は介護を受ける高齢者や障害者の代弁者やケアをする人としての介護者の役割を担うとともに、家族自身の悩みや思いを抱えている存在として、理解する事が必要とされるのです。

 

【 Bさん 家族の発言 】

「在宅介護ではべったりになってしまう。逃げる場がない。仕事でせっかちになっていて、職場で『イラついていませんか』と言われたときに気がついた。フラストレーションやストレスが溜まっていました。介護者が倒れると被介護者も倒れる。介護者にどれだけ『いい気持ち』(ストレスの緩和)ができるか、困ったときにセーフティネットを作れるか重要じゃないと思う。やさしい介護とか楽しい介護はなかなかできないが明るい介護はできると思う。介護者が気持ちを明 るくするために、その負担を軽減してくれるような事があるといい。介護者が明るくなれば、被介護者も明るくなるんです。でもなかなか1人ではできない。自分にストレスをためない。自分にやさしい気持ちがあったら、やさしくなれる。ゆとりがないとだめなんだ。ゆとりをもつためには、ストレスを捨てなきゃだめ。気持ちの切り替えのための小箱をどれだけ持っているかが大事だと思う。介護する人の感情はわかる。笑っていると笑う。怒っていると怒る。怒っていると声が大きくなって、鬼の顔になっているでしょう。そこだけは絶対ぼけない。人間の本能なんでしょう。ミラー現象というのだけど本当にそう。」

在宅での介護をしている家族は介護に起因するストレスを抱えています。介護をしていく中で、自分自身のストレスに気づき、自分でストレスをコントロールしようとしています。

しかし、一人ではなかなかできない事が多いのです。

介護する家族はさまざまな感情に揺れ動きながら介護しています。時には怒ってしまった事に後悔しながら。しかしパーフェクトな介護は家族ゆえになかなかできないのです。

介護職はそのストレスに気づき、言葉を選んでコミュニケーションを取り、家族のストレスを緩和するような支援が求められているのです。

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